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RaFaElⅡ 150-HT

Vol.032 | 17.03.23 | ものづくり

3Dプリンターがもたらす未来のものづくり

ものづくりに革命をもたらすものとして世界的な注目を集めている3Dプリンターが生み出す新しい産業と文化の可能性。

日本の3Dプリンター技術の発展とともに歩む

2013年2月にアメリカのオバマ大統領が行った一般教書演説で言及されたり、クリス・アンダーソンの著書『MAKERS』で取り上げられたり、近年「3Dプリンター」への注目が世界的に高まっている。デジタルデータを印刷するような感覚で、3DCADデータから立体物を生成できる3Dプリンターは、従来のものづくりに革命を起こすとも言われている。

3Dプリンターの技術は「AM(Additive Manufacturing)技術」とも呼ばれ、その原点は1980年代に誕生した「光造形法」である。1986年、大手商社マンだった早野誠治氏は光造形法に出会い、そこに大きな可能性を見出し、事業化を目指す。早野氏は光造形法の研究者とともに装置の開発に取り組み、1988年から販売を開始した。「本当に売れるかどうか分からなかった」という早野氏だが、ものづくりのための試作品を専門につくる企業が最初に購入してくれた。早野氏はAM技術の研究者とも広く交流し、この新しい技術の普及、啓発、事業化のために奔走し、シンポジウムの開催や業界団体の設立にも関わっていく。

1996年、早野氏は株式会社アスペクトを設立し、3Dプリンターのビジネスをさらに推し進めていくことになる。


代表取締役 早野誠治氏

国産ハイエンド装置を自社開発

当初アスペクトでは海外メーカーの輸入代理店として、粉末床溶融結合技術(PBF: Powder Bed Fusion)方式の3Dプリンターの販売と保守サービス、粉末材料の提供を行っていた。しかし契約上の問題から製品の輸入ができなくなり、2003年から自社開発をスタートさせる。2006年に日本版PBF装置「SEMplice」の開発に成功。また2011年に開発した「RaFaEl」は、2012年度の「東京都ベンチャー技術大賞」を受賞している。その後もアスペクトでは数十万円で購入できる個人向け製品ではなく、ハイエンド市場向けの大型3Dプリンターの開発を続けている。

「人類のものづくりの歴史はまず素材を削ってつくる切削技術に始まり、次に素材の形を変形させる成形加工技術を手にしました。3Dプリンターはレーザーによって材料を固め、それを積み重ねてつくる技術、言わばプラス加工法なのです」と早野氏。「例えば他の惑星に人類が移住しようという時、現地で必要になる部品を全て地球から持っていくわけにはいかないでしょう。3Dプリンターなら必要な分だけ、現地でつくることができます」


「SEMplice」0号機

3Dプリンターがものづくりの高付加価値化を実現する

日本企業が工場を海外に移していく流れは、もはや止めようがない。世界の工場となっている中国も、もっと人件費が上がれば、さらに別の国に仕事を奪われる可能性もある。そんな状況下で自国内でのものづくり産業を維持していくためには、高付加価値化へのシフトが必要となる。そこで注目されるのが3Dプリンターの技術である。「例えば、その人のためだけにデザインされたジュエリーやその人の耳の形状にぴったりのイヤホンなど、大量生産には向かないカスタマイズ品も3Dプリンターなら実現できます」

こだわりのないものなら大量生産品で十分だが、思い入れがあるものや世界にひとつしかない自分だけのものを3DCADでデザインし、3Dプリンターでつくる時代がやってくるはず。自分でデータをつくれないなら、代わりにデザインしてくれる人が現れ、それが新しい産業になっていくかもしれない。早野氏は「想像もできない使われ方、新しい文化が生まれてくることを期待したいですね」と言う。

人類が手にした新しい選択肢としての3Dプリンター技術。それを発展させていくことは、必ず私たちの暮らしをより豊かなものにしていくはずだ。


3Dプリンターで出力した「マリンタワー」模型(左)と五重塔(右)

株式会社アスペクト ホームページ
http://aspect.jpn.com/
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